◆節分、追儺、鬼やらい、豆撒きの由来(二)

2007年02月03日

Posted by スサノヲ(スサノオ) at 21:00 │Comments( 0 ) 年中行事に見る日本文化考
◆節分、追儺、鬼やらい、豆撒きの由来(二)


◆節分、追儺、鬼やらい、豆撒きの由来(二)

◆◇◆豆撒き、追儺と豆占と迎春呪術

 今ではかなり簡略化されているが、民間における「豆撒き」は、まず大豆を煎って一升桝に入れ神棚へ供えた後、家長が「鬼は外、福は内」というよく知られる言葉を叫びつつ、部屋の中や出入り口に撒く。このような節分のスタイルになるのは、平安時代に朝廷や貴族の間で行われていた「追儺(ついな)」(中国から伝わる儀式)に始まる。

 古来からの農耕行事「豆占」と習合して「豆撒き」が全国に広がったのは室町時代頃から、そして今の形になるのは江戸時代だと考えられている。

 豆は鬼の目を打って追い払うと考えられ、桝に残った豆(あるいはまいた豆)を自分の歳の数だけ食べると一年を無病息災に過ごす事ができるとするのが一般的である。

 追儺の行事が入ってくる以前から、日本では農耕の占い「豆占」を行っていた。撒いた豆で一年の気候や吉凶を占う「豆占」(大豆を十二個灰の上に並べ、右から順に一月、二月、三月・・・と決め、豆の焼き具合によって月々の天候を占う年占=としうら)が地方に見られる。

 この他にも、節分に柊の枝に焼いた鰯の頭を挿したものを門口に挿す風習が日本の各地で行われていた。さらに豆撒きには、陰陽道(陰陽五行思想)の迎春呪術としての意味が隠されている(「火剋金」)。このように様々な要素が入り込み、今日の日本式節分の行事が出来たといえよう。

 余談だが、節分の日の横に切らずに棒状のままの巻き寿司を恵方に向かって食べると、幸福になるという言い伝えを広めたのは、海苔の消費拡大のために寿司業者と海苔業者が働きかけたことがきっかけである。

 確かに大正の初めに大阪の花街で、お新香の漬けかかる節分の時期にお新香を巻いた海苔巻を恵方に向かって食べるという風習はあったが、それが太巻き寿司に変わり大手の寿司チェーン店の宣伝を通して全国的に広まったようなのだ。(※注1・2)

※参考Hints&Notes(注釈)☆彡:*::*~☆~*:.,。・°・:*:★,。・°☆・。・゜★・。・。☆.・:*:★,。・°☆
 
(※注1) 現在行われている豆撒きを始めとする行事の由来は、諸説はあるが中国の周王朝時代に編まれた「周礼」に則り平安時代に毎年大晦日(一説には二十八日)に行われた追儺(ついな)の儀式が元になっているといわれている。

 「儺」の字は「おにやらい」とも読み厄災をもたらす邪鬼を追い払う行事に他ならない。当時の「鬼やらい」は十二ヶ月それぞれの疫病神を表す十二匹の鬼に扮した鬼役と、松明を翳してそれを打ち据える役が立ち回りを演じるもので、豆を撒く習慣は無かったようだ。

 また原形はやはり陰陽五行思想を元にした形であったようだ。豆を撒く習慣は「豆占」という古来からの農耕行事があり、これは節分の夜に十二ヶ月に擬えた十二個の大豆を灰の上に並べてその焼け具合によって、月々の天候と作物の豊凶を占っていた。

 この行事は現在でも一部地方には独立した形で残っていたりもする。この二つの行事が融合して一説によると鎌倉中期に、または室町初期に民間へ広まり江戸期になって全国的に現在の形に近くなったといわれている。

 江戸中期以降の一般的な江戸での節分は豆の枯茎に塩鰯を刺した物と柊の小枝を家の玄関へ挿す。主人が神前仏前に灯りを点し、竃を清めて鬼打ち豆を煎って、煎りあがった豆は桝に入れてから三方へ載せてその年の年男に渡され恵方へ向って豆を打ち、次に神棚に向って同じように打ち順に家中の部屋すべてへ豆を打つ。

(※注2) 節分の夜などに柊の枝に焼いた鰯の頭を挿したものを門口に挿し、「焼いかがし」という風習が日本の各地で行われていた。「焼っかがし」などとも呼ばれ、語源は「焼き嗅がし」である。

 これは棘のある柊の葉や焼いた鰯の放つ悪臭による魔除けの意味があるようだ。もともとは、臭気の強いネギやニラ、また煮干しや髪の毛などを火にくべ、虫の口焼きと称し、呪文を唱えたそうである。

 農家では、農薬が普及する前は、田畑の害虫を煙や悪臭で追い払ったのだ。それを害虫の活動がそろそろ始まると考えられた立春の頃に行っていたのである。この日本の伝統と中国の鬼払いの追儺の儀式が混合され、このような節分の行事が成立したと見られている。


スサノヲ(スサノオ)


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